認可保育園の保育料の現状と自由化案について

書くぞ書くぞと言っていてようやく書くことができました。長らくお待たせして申し訳ありませんでした。
でもまずは、保育料の自由化について検討する前に現状の保育料のシステムについてお話しましょう。

保育料の額と徴収方法

現在では認可保育園の入園申し込み、入園の選考・決定、保育料の徴収は市区町村が一括して行っています。
保護者が支払う保育料の額は応能負担と言い、各家庭の所得状況により決定されます。また、子どもの年齢によっても額が変わります。


ここでちょっと脱線しますが、今年、扶養控除がなくなりましたよね。無くなった分増える税額以上に子ども手当を支給するという内容でしたが…気づきましたでしょうか?扶養控除がなくなり所得額が上がるということは、そう、保護者負担の保育料が去年より実質値上がりするのです。
と、言うことは事実上の増税になるやも?って世帯が確実に出てきますね。しかも低所得者世帯に。今度具体的な計算をしてみましょう。


さて、話を戻して以下の区を参考に保育料について計算してみましょう。http://www.city.itabashi.tokyo.jp/c_kurashi/007/007178.html

年収500万世帯
・家族構成
 父 会社員 母 パート 子 零歳
・年収
 父 400万 母 100万 世帯年収 500万 課税対象 400万
所得税控除
 基礎控除 38万 配偶者控除 38万
 給与所得控除 134万 社会保険料額 約50万
・所得額および保育料
 所得税額 70,000円 保育料(月額) 21,200円  

年収300万世帯
・家族構成
 父 契約 母 パート 子 5歳と2歳
・年収
 父 200万 母 100万 世帯年収 300万 課税対象 200万
所得税控除
 基礎控除 38万 配偶者控除 38万
 給与所得控除 80万 社会保険料額 約25万
・所得額および保育料
 所得税額 9,500円 保育料 8,200円+3,920円=12,120円  

年収800万世帯
・家族構成
 父 会社員 母 会社員 子 3歳と零歳
・年収
 父 500万 母 300万 世帯年収 800万 課税対象 800万
所得税控除
 基礎控除 38万×2 給与所得控除 154万and108万
 社会保険料額 約64万and約38万
・所得額および保育料
 所得税額計 204,500円 保育料 21,600円+12,200円=42,800円  

と、まぁ、ざっとこんな計算になります。
この保育料を毎月市区町村に保護者は支払い、市区町村は税金を上乗せして、保育園の運営費として補助金を支給しているのです。

保育料の自由化について

現在は保育料は一律で決まっていますが、これを保育園ごとに決める、保育料の自由化制度を導入してはどうか?という声がありました。
http://webronza.asahi.com/synodos/2010082300006.html

保育料の自由化をすると、どんな問題が出てくるのか。それは、今まで保育園を選ぶ際に基準にはなかった『保育料の価格差』というものが出てきます。
価格というものは非常に影響力の強い要素です。上記サイトに倣って水を例に挙げてみましょう。
国のさまざまな検査をクリアしたミネラルウォーターが200円で売られています。その横で、自社検査をクリアしたミネラルウォーターが100円で売られていたら、どっちを買いますか?
お財布に余裕があれば、安全そうなこっちにしようかな?という考えも生まれますが、お財布に1,000円しかなかったらどうですか?
大半の人は、あとあとのことを考えて100円のミネラルウォーターを買うと思います。中身に対してはあまり深く考えずに。
そのくらい、価格というものは影響力が強いのです。

さて、そこで「直接補助方式」の登場です。収入の少ない人には毎月100円あげるよ、っていう制度です。
でも、その100円で自社検査の方を買う可能性もあります。なので、もしこの制度を入れるなら『国の検査をクリアした水を買う場合』という条件を入れる必要があるでしょう。

一見、問題なさそうに見えるのですが、実際に保育園に置き換えてみるとどうでしょう?
ここまでで結構長くなってしまったので、保育園に置き換えたときに発生する問題点については、また次回にしたいと思います。
毎回長くなってしまい、また、お待たせしてしまって申し訳ありません。

次回こそ必ずっ!
でわでわ。

認可保育園の運営費のについて。

さて、今日は運営費のお話をしたいと思います。


認可保育園の運営費は、国・都道府県・市区町村からの補助金で99%を賄っています。ただ、ここで間違ってはいけないのは、補助金というのは100%税金ではないということです。
利用者負担の割合があり、補助金のうちおよそ10%ほどが利用者から徴収した保育料にあたります。


保育料の話はひとまず置いておいて、まずは運営費の話を進めましょう。

運営費の計算

運営費は在園している児童数により補助金を請求することができます。前回もお話しましたが、公立保育園では年度始め(4月)の児童数で、私立は毎月初日の児童数で補助金の額が決まります。
また、児童の年齢によっても補助金の単価が変わり、さらに園の定員数によっても単価が変わります。
さらにさらに、職員の平均勤続年数によっても単価が変わってきます。これは、勤続年数が上がった際の昇給に対応できるように整備されている制度です。
これらの単価は、だいたい半年に一回変更があります。ここ10年の傾向としては、年々額が下がってきていますね。

さて、東京都を例に挙げてみましょう。平均勤続年数10年以上の施設で、自治体独自の補助金も合わせ、今年はこのような単価になっています。

零歳児 国184,820円 都7,880円 区15,400円 合計208,100円
1歳児 国105,660円 都4,540円 区30,550円 合計140,750円
2歳児 国105,660円 都4,540円 区15,090円 合計125,290円
3歳児 国 47,150円 都5,820円 区16,280円 合計 69,250円
4歳児 国 39,250円 都6,200円 区16,280円 合計 61,730円
5歳児 国 39,250円 都6,250円 区16,280円 合計 61,780円

では、今度は具体的にいきましょう。認可定員91名の施設で、零歳児保育、延長保育を行っている施設の場合、以下のような補助金で運営しています。(延長保育の補助金分、および人件費については今回は計算しません。延長保育の記事のときに詳しく説明します)

零歳児 10名 × 208,100円 = 2,081,000円
1歳児 15名 × 140,750円 = 2,111,250円
2歳児 16名 × 125,290円 = 2,004,640円
3歳児 16名 ×  69,250円 = 1,108,000円
4歳児 17名 ×  61,730円 = 1,049,410円
5歳児 17名 ×  61,780円 = 1,050,260円

合計月額 9,404,560円

他にも細かな制度があって微妙に補助金が出たりしている場合もあるので、だいたい月額1千万くらいで運営していると考えてください。すると、年間だいたい1億2千万で運営していることになります。

人件費の計算

保育園の経費の80%は人件費です。一般的に、85%を超えている場合は人件費過多、70%を下回っている場合は雇用環境が劣悪とされています。認可保育園は基本的に決算書を公開しなければいけない決まりがあるので、園を選ぶ基準のひとつとして確認してみても良いと思います。

さて、認可定員の配置基準の話を覚えていますか?(詳しくは『公立保育園のメリットについて』の記事をご参考ください)上記施設の場合の配置基準で人件費を考えてみましょう。

零歳児 10÷3=3.3人
1歳児 15÷5=3.0人
2歳児 16÷6=2.7人
3歳児 16÷20=0.8人
4、5歳児 34÷30=1.1人
合計 10.9人 → 11人

平均勤務年数10年以上ですから、すべて35歳前後の保育士で構成されていると仮定します。35歳前後で職を問わず健全に生活できる額というのは個人的に月30万くらいだと思っています。手取りで26万くらいですね。すると、年収で言うと500万くらいです。社会保険料の事業主負担分や福利厚生費、事務手続き費用等はだいたい1.5倍で計算するとおおよそ何とかなるので、保育士一人750万円と考えます。

さぁ、具体的に考えていきましょう。まず、運営費の8割が人件費ですので、人件費として使える額は9,600万円になります。
保育士は11人で8,250万円です。この時点での差額が1,350万円。
年収300万円の契約の職員の人件費を450万として2人雇うと900万円ですので残り450万円。
残りのお金で時給1,000円のパート保育士を1日6時間、週5日で雇ったとして年間で156万円ですので3人くらい雇えます。
これで、保育士の合計は16人になります。
保育園を構成する職員は保育士だけではありません。看護師、調理員、事務員、嘱託医の人件費は別枠で、まぁ、何とかなるでしょー。ってくらいの補助金が出ています。園長や栄養士、用務員の人件費は事務手続き費用等から捻出します。と、いうか何とかします。

如何ですか?これが、私立認可保育園の人件費の中身です。まぁ、施設によって差異はあるでしょうが、私が健全と思える範囲の職員配置です。
正直なところ、東京都の場合独自の補助金がしっかり出ているので、まともな運営をしていれば、よっぽどのことがない限り運営難になることはないです。

何故経営難の園が出てくるのか

では、どうして運営難になってしまう園があるのか?
それは前回お話した園長の運営能力の問題もあるのですが、他にも理由があります。

ひとつは、10年以上前の給与テーブルを使用しているための人件費の過多です。現在の補助金の額は先ほどお話した通りですが、10年前はこの倍の補助金が出ていたそうです。
…倍。単純に待遇も倍なので、その給与テーブルだと年配の職員の年収が800万くらいです。うっへり。その給与の職員が残ったまま補助金の額が下がり続け、現在経営難になっているという状況です。
正規を雇うと給与テーブルは昔のままですから高給です。そのためそういった園ではパートや契約職員を低賃金で働かせます。これが、新卒保育士の平均年収190万という馬鹿げた数字を出させている理由です。
自分の4倍も給料を貰っている人が隣で働き、経験の差はともかく、仕事内容もについても同じ保育だとしたら、モチベーション下がりますよね。オマケに指導等が丁寧にあるわけではなく、感覚で覚えろという姿勢であれば尚更です。そのためすぐに辞めてしまい、保育士に嫌気がさし、別の業界に行ってしまうのです。ちょっと脱線してしまいましたが、これが保育士が不足している理由のひとつです。
補助金の額が少ないのではありません。年配職員の既得権利にしがみつく姿勢こそが若い人を苦しませているのです。これが理由のすべてではないですが、大半を占めていると私は思います。

もうひとつは、特別事業と呼ばれるいくつかの事業の採算性が悪すぎることです。
東京都で採算の取れる事業としては、延長保育、零歳児保育、11時間開所保育などが挙げられます。この3つはまともに運営していれば赤にはギリギリならないくらいの額の補助金が出ていますが、障害児保育、病児・病後児保育、一時保育などは100万円単位の赤字が出ます。それを補てんするために経営難になっているケースもあります。(詳しい話は、それぞれの事業のお話をするときにしますね)

この2つが経営難になる主な理由です。
前者は企業努力が必要ですが、後者はそもそものシステムに問題があります。その解決策については、勉強し、考えつつここに書いていきたいと思います。


さて、ずいぶんと長くなってしまいました。必要最小限にまとめているつもりなのですが、難しいですね。
本当は人件費以外の運営費のゆくえ、健全な給与テーブルの作り方、保護者が負担する保育料の自由化についてもお話したかったのですが、長いと読むほうも疲れてしまうのでまた後日に。

でわでわ。

私立保育園の運営ついて

前回まで公立保育園のお話をしてきましたが、今度は私立保育園についてお話しようと思います。

運営している法人について

私立の認可保育園は、そのほとんどが社会福祉法人NPO団体です。財団法人や個人立の園もいくつかあります。最近では株式会社が参入しているケースもあります。
社会福祉法人NPO団体などの『公益法人』と呼ばれる法人は、営利を目的とした団体ではない非営利団体です。子どもたちの健全な成長の促進や保護者のケア、地域の活性化など公的機関と同様の性質を持っています。
一方、株式会社はご存じの通り営利団体です。そのため、多くの自治体が株式会社の参入を拒否している傾向にあります。
実は少々誤解があり、認可保育園の運営は株式会社だろうと何だろうと、施設ごとに会計区分を設けなければいけないと定められているため、株主配当等に運営資金を回すことはできません。
ただ、社会福祉法人の運営主体は地域密着型なのに対し、株式会社は本部による一括運営になりがちなため、施設の独自性や地域性に乏しい面があります。

運営費について

公私問わず、認可保育園の運営費は国・都道府県・市町村からの補助金で運営費を賄っています。

補助金の額は、1つは在園している児童数で決定します。
ただし、公立保育園は年度始めの児童数で補助金の額が決定しますが、私立は毎月の児童数で計算します。
つまり、年度途中に退園・転園した場合に、公立は収入が減りませんが、私立は収入が減ります。そのため、私立は公立より職員数が少ない園がほとんどです。
また、人件費に運営費を奪われ、施設の修繕や備品の購入もままならない園も多々あります。

もう1つは、その園が行っている特別事業により補助金が出ます。
例えば、延長保育、一時保育、零歳児保育、病児・病後児保育、地域交流運動、実習生の受け入れなどがあります。
もちろん、こういった事業には職員の確保(看護師・栄養士を雇う、保育士を通常の配置基準とは別に雇う、など)や施設の広さ(児童一人あたり3.3㎡以上の有効面積の確保、特別保育室・隔離室を設ける、など)などのさまざまな規定をクリアしなければなりません。(特別事業についてはまた後日)
まぁ、ほとんどの事業が単独では運営困難なものが多いです。

運営についての問題

私立認可保育園の最大のデメリットでもあり、最大のメリットであること。
それは、運営者、つまり園長の運営能力に差があり過ぎることです。簡単に言えば、アタリとハズレの差があり過ぎることです。
園長先生は、基本的に保育士の人がなることが多いです。
しかし、保育士課程に運営知識や会計知識の勉強はありません。
園長になると決まった時点でそれらの知識を勉強し始めるのです。しかも、教える人が元保育士でやっぱり知識が乏しい場合には言わずもがな。
結果、会計士や社会保険労務士に援助を頼み、その費用を安く見積もっても年間300万円以上かかります。
現在園長の人は50〜60代のバブル前に就職した余裕のある世代が多かったりします。その頃の感覚のまま運営をしていると、今を生きている保護者や若い保育士との『ズレ』が様々な面で出てきます。
『ズレ』をそのままにしていたり、気づかなかったり、保護者のせいにしたりしていると、波及して『ハズレ』の保育園になるのです。(ぉ、うまいこと言ったw)


『園の特色』が出やすい分、アタリとハズレのが激しく、入園したあと『こんな園だったのか』と感じる方も多いでしょう。
そういう意味では、平均して大当たりも少なければハズレも少ない公立保育園の方が良いのかもしれません。
でも私は、お時間があるのであれば、園見学を通して自身の目で見極めることをお勧めします。公立私立問わず、良いものを自分で見分けてください。
ひとつアドバイスするとすると、園見学の申し込みの電話を入れたときに、集団で見学日を設けているなどを理由に断るような園はやめた方が良いと思います。集団で見学する日の保育は、確実に普段の保育内容とは違うものです。アポなしで行っても見学させてくれるようなところは、温かみがあってオススメです。


最後にちょっと自慢をひとつ。


今、私の園の園長は若く、30代半ばです。保育士から園長になったわけではなく、事務員から園長になりました。
大学時代に運営・経理知識を学び、社会福祉士の資格を持っています。
自身で運営・会計・法手続きが取れるので、上記に挙げた費用を丸々削減できています。そして、削減した分の経費で保育士を一人雇っています。
おかげで、公立ほどではないにしろ、保育体制に余裕があります。こういうのを企業努力と言うのだと思います。


さて、次回は Twitter でちょいとリクエストがありましたので『保育料の施設・法人による自由化』についてお話したいと思います。

でわでわ。

公立保育園のもうひとつの姿、『公設民営保育園』について

皆さんは『公設民営』という言葉をご存知ですか?
中にはご存知の方もいらっしゃると思いますが、あんまり一般的な言葉ではないです。
では、『民営化』という言葉なら聞き覚えがありますか?
ありますよねー。今では、郵便局を始め、テレビや新聞でさまざまな公共機関の民営化が叫ばれていますもんね。
『公設民営』は『民営化』のひとつの姿なのです。

公設民営保育園とは

公設民営の保育園は施設自体は市区町村立なのですが、働いている職員が公務員ではなく民間人の保育園のことを言います。
運営業務の委託(業務内容を決め、その内容を行ってもらう契約)、指定管理者制度(業務や施設の管理者を民間の業者に指定する制度)などの形態をとっている自治体もありますが、運営方針や手法は公立保育園に準じて行っているため、保育内容や行事、職員の人員配置などは公立の保育園と大差ありません。

公設民営保育園のメリット

一番大きなメリットは、各自治体の人件費の削減です。
公立保育園の職員は公務員の賃金形態ですが、私立保育園の職員の場合は各法人の賃金形態で雇用されています。
一般的に公務員は勤続年数が長くなるので人件費が多くなります。私立保育園の場合は入れ替わりも多いため、人件費が少なくなります。
また、賃金形態を法人が自由に決められるため、さらに人件費が圧縮できます。
税収の落ち込みにあえぐ自治体にとって、『人件費の圧縮』はとても魅力的なメリットです。
保護者の観点からすると…公設民営にする前の保育園がよっぽど酷い保育園でもない限り、まずメリットはないでしょう。

公設民営保育園のデメリット

保護者や子どもにとって一番のデメリットは、今までお世話になっていた先生が、まるっと変わってしまうことです。
特に子どもは戸惑うことでしょう。何故今まで遊んでくれた先生が急にいなくなるのか理解もできません。
それが子どもたちにとってどれほどのダメージになるかは計り知れません。


しかも、運営委託の契約期間というものがあり、その期間を過ぎ更新がされなかった場合はまた別の民間法人に変わってしまうのです。
そうすると子どもたちにとっては上記ダメージの再来になりますし、委託される法人側にとっては契約を切られる可能性があるのに正規の職員を大量に抱え込むリスクは背負えません。状況を考えると、ほとんどの職員を年・月単位の契約職員として雇うことしかできません。


また、人件費の削減というメリットは、そのままデメリットにもつながります。
雇用形態や賃金形態を法人が自由に決められるということは、正規で職員を採用している必要がないということです。
または、正規であっても昇給がない、賞与もない、扶養手当等もないということも有り得ます。
そのため、年収で言ったら150万〜250万くらいの低賃金で働いている保育士がたくさん産み出されます。(ただし、社会福祉法人に限っては勤続年数の伸びに応じた昇給を18年勤続までは保障しようという制度がある自治体もあるので、その場合には該当しませんが)
ワーキングプアで自分にも余裕のない保育士が、子どもに対してゆとりのある対応をするのはかなりの努力を要します。
そういった努力が報われない状況はいかがなものかと、私は思います。

もし民営化をするならば、公設民営はやめて欲しい

民営化の良し悪しについては多くの方が検証しているのでここでは省きますが、もし民営化する事態になったら、公設民営ではなく社会福祉法人などへ建物譲渡・土地貸与による『民設民営』の保育園にして欲しいと思います。
また、保育園だけではなく、児童館、図書館、小学校の用務員、給食調理員なども民営化されてきていますが、どこもパートやアルバイト、契約社員がほとんどです。
児童館のお兄さん、図書館のお姉さん、小学校の用務員さん、給食のおばさんになりたい、と思っている若者は『生活の保障はないけど好きなことがやれている』という職にしかつけない状況下です。
正規職員の雇用を生まない民営化は格差社会を助長するだけなので、どうせやるならワーキングプアを生まないように民営化する方法を考えて欲しいと、切に思います。
…と、ちょっと話が脱線しましたね。失礼。



公設民営保育園の話、いかがだったでしょうか?
次回は、私立保育園についてお話したいと思います。

それでは。

公立保育園を選ぶデメリットについて。

前回は公立保育園の良いところを書きましたが、今回は悪いところを書きたいと思います。

ただ、注意していただきたいのは、今から記載することはすべての園に該当するわけではありません。自治体によってはこの問題を解消すべく力を入れているところもあります。
『公立保育園はこういうものだ!』と決めてしまうのではなく、あくまで参考にして、保育園見学等を通してご自身の目で確かめてください。


前置きが長くなってしまいましたが、公立保育園のデメリットについてお話したいと思います。

デメリットの1 職員の異動が多い。

これは、公立保育園というよりも公務員の特色ですが、癒着等を防ぐため公務員は3〜6年周期で異動があります。
そのため、その園で長く働いている職員という方は少なくなります。
零歳から見てもらっている先生は、卒園前に異動するケースがほとんどです。
ちょっと、淋しいですよね。

デメリットの2 園の特色が薄い。

これは、前述の異動が多いことと、運営方針が市区町村で一括して決められていることが原因として挙げられます。
つまり、保育士が『こんなイベントをしたい!』と言っても、すべての園で行えるイベントでなければ行えないのがほとんどです。
私立園で行われている『宿泊保育』や『料理保育』『登山遠足』『音楽発表会』など、園の特色を生かしたイベントというのはほぼありません。
子どもにとって『楽しいこと』は多い方が、私は良いと思うんですけれどね。

デメリットの3 保育士の向上心が低い傾向にある。

これは、前述の運営方針が決められていることが原因として挙げられます。
つまり、『子どものためにこういうことをしたい!』と思っても実行できない状況化で、だんだんと意欲が失われてしまうケース。
それから、運営方針に沿って保育をしていれば給与や賞与が保障されているので、マニュアル保育となるケースです。
そのため、職員の効率性や柔軟性といったものが育ちにくい傾向にあります。

デメリットの4 規格外を嫌う。

そもそも私は保育における『規格外』という言葉、嫌いです。
公立保育園では、保育時間が厳密に決められていますから、延長保育制度の導入が遅れています。
他の子たちと一緒に保育しますから、障がい児や具合の悪い子の受け入れを拒否します。
また、少しでも『やんちゃ』な子がいると問題児扱いし、障がい児の申請等を保護者に促します。
保育スケジュールがしっかり決まっていますから、一時保育など制度の導入が遅れています。
日々の変化が激しく、体調も安定しないので零歳児の受け入れを行っている公立保育園が少ないです。産休明けの43日から受け入れている公立保育園はほとんどなく、3ヶ月や6ヶ月からの受け入れがほとんどです。


ちょっと話が脱線しますが、延長保育などのサービスは世の中のニーズに合わせて私立やNPOなどが独自で行い、補助金の制度ができ、公立で行う、という後追いの状態です。
ちなみに、現在の補助金の制度だと、障がい児保育、一時保育、病児・病後児保育を私立保育園で行うと確実に赤字になります。(何故赤字になるかはまた後日)
しかし、前述の通り障がい児や病児は公立保育園では拒否されます。
うちの園にも、近くに公立保育園が何園もあるのにすべて拒否され、たらい回しにされて泣きながら入園できないかと相談に来たお母さんがいます。今は、その子もお母さんも、うちの園に毎日笑顔で登園していますが、そのときは心中でもしかねない状態だったと園長は言っていました。
保育所は、子どもの保育ばかり重要視されがちですが、保護者の育児の手助けをするのも保育所の仕事です。
悲しいことですが、この認識がしっかりできている保育士は少ないのが現状です。

デメリットの5 非正規職員が多い。

…びっくりしました?意外ですよね。
公立はしっかりと正規の職員を雇用しているイメージがありますよね。
実は、平成16年に行われた国基準運営費の一般財源化により、財政難の地方自治体では公立保育所運営費が加速的に削られ始めました。
しかし、既にいる公務員の保育士の給与は下げられず、メリットのときに書いた職員配置数も減らすことはできません。
結果、数合わせのためのパートや契約の職員が多く雇用されています。
現状、臨時職員・派遣・短時間勤務の保育士は私立保育園より多い自治体がほとんどです。
非正規の保育士は給与が極端に安く、しかしながら仕事内容は正規と変わらない園がほとんどで、保育士のモチベーションもどんどん下がり、それはやはり保育に対する姿勢にも影響が出ます。
また、公務員ですから正規登用されることもありません。
せっかく人数が多くても、質が悪いのであれば逆にデメリットになってしまいますよね。


細かい話をするとまだまだあるのですが、大きなデメリットとしてはこの5つが挙げられます。


最初にも書きましたが、上記のことはすべての園に該当するわけではありません。
自治体によっては私立より力を入れている市区町村もあります。
必ず、自分の目で見極めてみてください。


次回は、公立保育園のもうひとつの姿、『公設民営保育園』についてお話したいと思います。
でわでわ。

公立保育園を選ぶメリットについて。

保育所の施設には、さまざまな種類があることをご存じですか?
認可や認証、無認可などはよく聞くことと思いますが、実はこれらの中でも施設の種類は細かく分かれているのです。
その数およそ20種類。


今日は、その中のひとつである『公立保育園』についてお話したいと思います。


公立保育園は、市区町村等の地方自治体が設置しているものですから、もちろん認可保育所です。(認可保育所は国の定めている基準(施設の広さや、職員の数、資格の有無、保育内容など)をすべてクリアした保育所です。詳細はまた後日)


公立保育園の特徴としては、まず保育士の数が多いことがあげられます。保育士の数は、職員配置基準に基づいて決められます。
以下が、国の定める職員配置基準です。
零歳 3:1  1歳 6:1  2歳 6:1
3歳 20:1  4、5歳(合算) 30:1


公立保育園では、上記配置基準から小数点以下を切り上げした人数の職員配置になっています。以下のような施設を例に挙げてみましょう。
例)定員90名の施設
零歳 10名:3.3人 → 4人
1歳 14名:2.3人 → 3人
2歳 16名:2.7人 → 3人
3歳 16名:0.8人 → 1人
4、5歳 34名:1.1人 → 2人
保育士合計 13人


また、園児数の他にも、以下のような規定があります。
60人以上の施設 → 1人
開所時間(営業時間)11時間以上 → 2人
2階建て施設の場合(公立のみ) → 1人


さらに、とある区を例に挙げると、産休等の欠員補充用の待機職員が、保育所1つにつき2人います。待機職員も、自宅等で待機しているわけではなく、各保育施設で働いています。
さらにさらに、園長、副園長も保育士だった方なので、日常的に保育を行っています。公立の保育園は運営や事務を市区町村の保育課などが一括して行っているので、事務処理はほとんどないためです。


つまり、90名定員の公立保育園(2階建て)では21人の保育士がいるということです。


と、言っても21人が多いかどうか比較対象がないとわかりませんよね。
私立保育園で同規模の施設ですと、保育士数は14人になります。
なんと1.5倍も違うのです!
何故こんなにも差が出てしまうのか。
それは、職員配置の計算方法が公立と私立で異なるためです。


先ほども少し話しましたが、公立の職員配置基準は小数点以下を切り上げています。対して、私立の職員配置基準は小数点以下第二位までを出し、その合計値を切り上げています。細かい計算は割愛しますが、その結果が1.5倍もの職員配置を生み出しているのです。
職員が多ければ、それだけ子どもたちに目が行き届きますので、保護者の方も安心できますよね。もちろん、私立保育園の中にも独自の運営努力で公立なみの職員配置をしている園も多々ありますので、そういった園と比較する際には別の面を見る必要があります。


もう1つの公立保育園のメリットとしては、平均勤務年数の長さがあります。
公立の保育士は正規であれば地方公務員ですので、定年まで働く人がほとんどです。つまり、ベテランの保育士が多くいるということです。
もちろん、私立保育園によっては平均勤務年数が長い施設も多々あります。


なので、メリットで判断がつかない場合にはデメリットで比較してみてください。
公立保育園のデメリットについてはまた後日。


それでは。

ブログはじめました。

8月19日。
ブログはじめました。


園長になりたいわけではないのだけれども、保育園の運営知識を叩き込まれている今日この頃。

保育園で勉強した運営知識や小ネタを載せていこうと思います。


どうぞよろしくお願いします。m(_ _)m