公立保育園のもうひとつの姿、『公設民営保育園』について

皆さんは『公設民営』という言葉をご存知ですか?
中にはご存知の方もいらっしゃると思いますが、あんまり一般的な言葉ではないです。
では、『民営化』という言葉なら聞き覚えがありますか?
ありますよねー。今では、郵便局を始め、テレビや新聞でさまざまな公共機関の民営化が叫ばれていますもんね。
『公設民営』は『民営化』のひとつの姿なのです。

公設民営保育園とは

公設民営の保育園は施設自体は市区町村立なのですが、働いている職員が公務員ではなく民間人の保育園のことを言います。
運営業務の委託(業務内容を決め、その内容を行ってもらう契約)、指定管理者制度(業務や施設の管理者を民間の業者に指定する制度)などの形態をとっている自治体もありますが、運営方針や手法は公立保育園に準じて行っているため、保育内容や行事、職員の人員配置などは公立の保育園と大差ありません。

公設民営保育園のメリット

一番大きなメリットは、各自治体の人件費の削減です。
公立保育園の職員は公務員の賃金形態ですが、私立保育園の職員の場合は各法人の賃金形態で雇用されています。
一般的に公務員は勤続年数が長くなるので人件費が多くなります。私立保育園の場合は入れ替わりも多いため、人件費が少なくなります。
また、賃金形態を法人が自由に決められるため、さらに人件費が圧縮できます。
税収の落ち込みにあえぐ自治体にとって、『人件費の圧縮』はとても魅力的なメリットです。
保護者の観点からすると…公設民営にする前の保育園がよっぽど酷い保育園でもない限り、まずメリットはないでしょう。

公設民営保育園のデメリット

保護者や子どもにとって一番のデメリットは、今までお世話になっていた先生が、まるっと変わってしまうことです。
特に子どもは戸惑うことでしょう。何故今まで遊んでくれた先生が急にいなくなるのか理解もできません。
それが子どもたちにとってどれほどのダメージになるかは計り知れません。


しかも、運営委託の契約期間というものがあり、その期間を過ぎ更新がされなかった場合はまた別の民間法人に変わってしまうのです。
そうすると子どもたちにとっては上記ダメージの再来になりますし、委託される法人側にとっては契約を切られる可能性があるのに正規の職員を大量に抱え込むリスクは背負えません。状況を考えると、ほとんどの職員を年・月単位の契約職員として雇うことしかできません。


また、人件費の削減というメリットは、そのままデメリットにもつながります。
雇用形態や賃金形態を法人が自由に決められるということは、正規で職員を採用している必要がないということです。
または、正規であっても昇給がない、賞与もない、扶養手当等もないということも有り得ます。
そのため、年収で言ったら150万〜250万くらいの低賃金で働いている保育士がたくさん産み出されます。(ただし、社会福祉法人に限っては勤続年数の伸びに応じた昇給を18年勤続までは保障しようという制度がある自治体もあるので、その場合には該当しませんが)
ワーキングプアで自分にも余裕のない保育士が、子どもに対してゆとりのある対応をするのはかなりの努力を要します。
そういった努力が報われない状況はいかがなものかと、私は思います。

もし民営化をするならば、公設民営はやめて欲しい

民営化の良し悪しについては多くの方が検証しているのでここでは省きますが、もし民営化する事態になったら、公設民営ではなく社会福祉法人などへ建物譲渡・土地貸与による『民設民営』の保育園にして欲しいと思います。
また、保育園だけではなく、児童館、図書館、小学校の用務員、給食調理員なども民営化されてきていますが、どこもパートやアルバイト、契約社員がほとんどです。
児童館のお兄さん、図書館のお姉さん、小学校の用務員さん、給食のおばさんになりたい、と思っている若者は『生活の保障はないけど好きなことがやれている』という職にしかつけない状況下です。
正規職員の雇用を生まない民営化は格差社会を助長するだけなので、どうせやるならワーキングプアを生まないように民営化する方法を考えて欲しいと、切に思います。
…と、ちょっと話が脱線しましたね。失礼。



公設民営保育園の話、いかがだったでしょうか?
次回は、私立保育園についてお話したいと思います。

それでは。