認可・認証・無認可保育園のそれぞれの保育料と運営費について

保育施設の規制を取っ払い、自由化したとき。
認可・認証・無認可の枠はなくなります。
枠がなくなったとき、それぞれの園がどのような運営状況になるか、具体的な数字を出して見てみましょう。

認可保育園の保育料

まずは、認可保育園が子ども1人あたりの保育にどれだけのコストをかけているかを考えてみましょう。
零歳児を例に挙げてみます。認可基準には零歳児3人に対し保育士1人が義務付けられており、看護師の雇用と嘱託医との契約が必要となります。
前回の運営の話に出てきた人件費で計算すると、保育士が750万です。看護師・栄養士も同等と考えて750万ずつ。調理員は少し安めに400万。嘱託医との年間契約費用が約50万。保育士以外の人件費は全クラスで割るとして1/6で計算。零歳児を9人預かることにすると年間2,650万円の人件費がかかります。支給されている補助金の額もほとんど差異はありません。
(詳しくは「私立保育園の運営費について」を参照ください)
人件費が8割ですから、この額を0.8で割れば全体の運営費がわかります。

人件費2,650万÷0.8÷9人÷12か月≒305,000円

これが、現在零歳児1人に対してかけている費用です。現在の保護者負担はこの金額の1〜2割程度ですが、自由化する場合は全額負担になります。
『直接補助方式』では低所得者世帯に補助金が出る形ですが、果たしていくら補助されるのでしょうか。

認証保育所の保育料

次に、とある認証保育所を例に、保育料を計算してみましょう。
同じく、零歳児で計算します。
そこの保育園は零歳児を9時間預かって月53,000円で、入会金が25,000円かかります。まぁ、2年通うとしても月2,000円プラスって考えですかね。それから紙オムツとおしりふきは持参です。月3,000円分くらいですかね。月齢によっても消費量は違うと思いますが、とりあえず。
すると、保護者から徴収している利用料は58,000円です。


次に、助成金を見てみましょう。
零歳児は、定員81名以上の施設では1人あたり月額98.000円の助成金が出ています。すると、保護者負担を合わせて156,000円が零歳児の月額保育料になっています。認可保育所に比べて100,000円も安いのです。
何故こんなに差が出るのでしょうか?
理由は、認証保育所の職員配置基準にあります。

認証保育所では零歳児3人に対し保育従事職員1人が義務付けられております。保育従事職員は保育士資格を持つ人間である必要はなく、週5日1日6時間以上働いている職員を指します。ただし、全保育従事職員の6割は保育士資格者であることが義務づけられています。
また、嘱託医との契約と、調理員の配置が義務つけられています。


さて、それでは年間の運営費を見てみましょう。
零歳児9人預かるのに、156,000×9人×12か月=16,848,000円で運営していることがわかります。人件費を8割で計算すると約1350万です。
はて?この額では認可で計算していた保育士を2人も雇えません。と、なると契約職員など、低賃金で職員を雇う他ありません。
保育士400万×3+その他職員(1/6の額)150万=1350万なので、だいたいこんな感じでしょうか?
人件費400万の場合、職員の年収は約300万円。
月額給与はボーナスありで18万7千円、ボーナスなしで25万円。
20代前半の職員ならともかく、経験年数10年以上の職員はとてもじゃないですが雇えません。
そのため、認証保育園は若い先生が多い傾向にあり、昇給も見込めないので勤続年数が短い傾向にあります。

無認可保育所の保育料

さて、無認可保育所の例を挙げてみましょう。
無認可保育所には、国の規制はいっさいありません。なので、認可・認証の規制を取っ払い、自由化したとしても一番影響が少ないのが無認可保育園です。


無認可保育所保育所によってピンキリで、質も価格もマチマチです。
保育士の資格を持っている必要もないですし、マンションの一室で預かっているところもありあす。
この間、こっそり見学した無認可保育所は、零歳児の預かりが月額10万円弱で、部屋の中はギッシリベビーベッドが敷き詰められており、ハイハイするスペースもありませんでした。
ベビーベッドは5,6台ありましたが職員は一人で、何かあるときは別の部屋にいる職員を電話で呼び出していました。


零歳児1人10万円ですから、年間120万円。9人預かって1080万円。
人件費8割で860万。職員2人でみるとして1人400万。
人件費400万だと年収300万。認証と変わらないですね。
まぁ、本当に300万貰えているかは疑問ですが…。

運営費と保育料を表にまとめてみる

じゃぁ、今までの話を簡単に表にまとめてみましょう。

例)零歳児を9人預かる場合

認可保育園
運営費 3300万 人件費 2650万
職員数 保育士3人 看護師 栄養士 調理師 嘱託医
保育士年収 500万計算
月額保育料 305,000円(現在は1〜2割負担)


認証保育所
運営費 1700万 人件費 1350万
職員数 保育従事職員3人 調理師 嘱託医
保育士従事職員年収 300万計算
月額保育料 156,000円(現在は3〜4割負担)


無認可保育所
運営費 1080万 人件費 860万
職員数 職員2人
職員年収 300万計算
月額保育料 100,000円


さて、あなたはどの保育所を選びますか?
条件が違い過ぎて、比較が難しいですよね。
そして、お金があれば認可に入れたいのに、という格差を生みます。


「自由化」「効率化」と言えば聞こえは良いですが、これでは収入の少ない世帯の子どもを排除するシステムです。
いくら直接補助されようが、安い方に目が向くに決まっています。
「子どもの安全」や「笑顔」「未来」を考えるために、「認可」というシステムはお金で判断する目を覆っているのです。


今一度、保育園がどういう場所なのか、どういう場所であるべきなのか、考えてみてください。


さて、次回は…何のお話をしましょう?
特に思いつかないので、何かリクエストがあればコメントくださいナ。

でわでわ。


参考資料(PDF)
東京都認証保育所事業実施要綱
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kodomo/hoiku/n.hoikusyo/syosai/files/youkou.pdf
認証保育所運営費等補助経費
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kodomo/hoiku/n.hoikusyo/syosai/files/22ninsyoutanka.pdf